さてさて、下巻である。
凹みまくった村上の姫が瀬戸内へ帰ってきて
父・武吉の思い通りに慎ましく豹変したはずが、
やはりそこは海賊王の娘。
自ら化けの皮を剥がすのもまた早い。
姫の復活からそれほど間をおくこともなく、
海賊同士のプライドをかけた木津川口の合戦へ。
斬り斬られ、騙し騙され、落とし落とされ。
海上で繰り広げられる命のやりとり。
数日前に知己を得た者同士であっても、
敵となったからには「覚悟せい」と
容赦なく刃物が振り下ろされる。
そんな敵味方入り乱れた戦場の様子を
ワクワクしながら目で追っていると、
ふと頭をよぎったのがチャンバラである。
そのとき気づいた。
これは「歴史小説」ではなく「時代活劇」なのだと。
「大河ドラマ」ではなく「水戸黄門」や「桃太郎侍」なのだ。
さしずめ村上吉継・村上吉充は助さん格さん、
八兵衛は村上景親、風車の夜七は鈴木孫一といったところ。
上巻と違わず、無粋に挿し込まれる古書の出典や解説は、
もしかしたら少々荒唐無稽なこの時代活劇に
少しでも現実味を付与したいがためなのではないか。
そう考えると、終盤に見せる景姫の驚異的な戦闘力も
人外のような七五三兵衛のラスボス加減も素直に頷ける。
下巻のほとんどを占める果てしない戦闘シーンは、
さながら印籠を出すまえのお仕置きのようなもの。
素直に読み進めれば、それはとても長い見せ場の連続。
ぜひとも映画化してもらいたい(はるかちゃんで)。