『白ゆき姫殺人事件』

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shirayukihime

湊かなえ/著:集英社

3月29日に全国ロードショーされる「白ゆき姫殺人事件」。湊かなえによる同名小説の映画化である。
その予告を映画館で垣間見、なかなか興味深いあらましに刺激され、あわてて書店へ飛び込んだのが昨年末。
そのまま手に取ることもなく新年を迎え、つい先日ようやくそのページをめくった。

湊女史お得意の一人称独白形式。まるでドラマの台本のように流れる話の運び方は、脚本家を目指していた彼女ならでは。
いつもながら大変読みやすい。これならブログ世代の若者でもすんなり作品の中に入ることができるだろう。

序盤から中盤にかけて、犯人と思しき人物をよく知る関係者の独白証言が取材という形で表現され、
隠された心情とともに事件の全体像が露にされていく。
そんなところだけを聞くと宮部みゆきの『理由』を彷彿としそうだが、構成はもちろん意図するところはまったく異なる。
この作品で著者が言いたかったことは、誰にでもある身近に潜む些細な悪意が連鎖反応しやすくなった社会。
「テトリス」や「ぷよぷよ」、いやいや今なら「パズドラ」のコンボのようにハマってしまったら、
本人の意志とは関係なく殺人にまで簡単につながってしまえるという現実。
こういった些細な悪意がはらむ脅威を題材にするところは、他の湊作品にも多く共通する。

物語の最後の方には、事件の関係者たちが書き込んだ「マンマロー」という「Twitter」によく似たソーシャルメディアのログと、
劇中に登場する架空の週刊誌が掲載した事件の記事が時系列に掲出されている。
それを目にする時点ですでに読者には犯人が誰なのか呈示されているわけだが、
それでもまだ埋まっていないパズルのピースを読み取って埋めてやることで、
犯人を含めた本当の意味での全体像が明らかになる。

ソーシャルメディアを効果的に取り入れた同じ湊作品の『高校入試』が先にドラマの脚本であったように、
そういう意味では同作品もむしろ映像化向けの作品なのかもしれない。
作中で象徴的に扱われる「白ゆき姫」などは映像の方がうまく表現できそうだ。
さてさて、映画の公開まであと1カ月と少し。
登場人物の設定など少し違うところもあるようなので、映画館に足を運ばれる前にぜひともオススメしたい。

映画『白ゆき姫殺人事件』オフィシャルサイトはこちら

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