久しぶりのノベルズ。久しぶりのGシリーズ。久しぶりの森博嗣。
9年以上前から始まったこのGシリーズもいよいよ9作目。
…というとなにやら待ちに待っていたみたいだか、そうでもない。
なぜかいつからか森博嗣からちょっと距離を置くようになっていた(なんでだろ)。
たまたま時間つぶしにとびこんだ書店で、
たまたま新刊棚に並んでいたのがこの『キウイγは時計仕掛け』だった。
いつもなら併読してる本が何冊か手元にあるはずが、この日は珍しく手ぶらで、
時間があるなら久しぶりに…と買ってみたというわけ。(なんの言い訳?)
作品をたぐってみると、前々作『ηなのに夢のよう』までは読んでいた。
つまり、前作『ジグβは神ですか』を読んでなかっただけらしい。
こういうとき、シリーズと銘打ってるわりに
順を追って読まなくてもとくに支障のないのが森作品のいいところ。
今回はGシリーズにしては珍しく生身で犀川先生が登場している。
国枝先生も相変わらず。西之園萌絵が准教授になっていたのには驚いたが、
まあ順当な成長の仕方かも。院生だった山吹皐月も助教になっているし、
依然として猿回し役の加部谷恵美も就職していた。
このあたりの時間の進み具合は、
同じように現実世界で時間が空いた読み手(自分)と妙にシンクロしていて、
かえってスムーズにGシリーズの世界に入り込めたような気がする。
ただ、名前だけが飛び交いまくる真賀田四季博士(登場はしない)。
こればっかりは、この人の登場作品を一冊は読まないと、
ちょっと置いていかれる感覚を味わうかもしれない。
彼女とつながりの深い島田文子女史も登場するから、
S&Mシリーズにして処女作『すべてがFになる』を
先に読んでおけば物語は俄然厚みを増すだろう。
それに、当時のヒロインでまだ学生だった西之園萌絵の
内面的な成長も存分に感じられるに違いない。
ただ、話の内容はGシリーズの中でもかなり蛋白だと感じた。
大学で起きた殺人事件に巻き込まれる登場人物たち。
結末は概ね想像していたとおりだった。
そもそもGシリーズそのものが、他のS&MシリーズやVシリーズに比べ、
ミステリのテイストが薄いことは分かっていたはずなんだけれど。
個人的には四季シリーズのような(なかでも秋)、
ハラハラドキドキするものをもう一度読んでみたい。
(Xシリーズはなぜか記憶に残っていない)
とにもかくにも、懐かしい名前とちょっとした伏線が、
残すところあと3作となったGシリーズ(著者宣言済)で
どんな展開を見せるのか、それはそれで楽しみになってきた。
(といっても2014年はXシリーズに戻るらしいから再来年以降だけど)
それまでに『ジグβは神ですか』をひとまず読んでおくとしよう。