長い間、奈良でお仕事をさせていただいていたこともあってか、
地方の活性化に貢献するようなプロモーション施策に興味があった。
そんなある日、テレビのドキュメント番組『ソロモン流』で
フォーカスされていた殿村美樹さん(著者)を発見。
「ひこにゃん」「うどん県」「佐世保バーガー」…。
いずれも見聞きしたことのある言葉だった。
同書では、殿村さんがこれまで手掛けた約20の地方や中小企業の施策事例をもとに、
「人」や「場所」や「時」を“ズラす”ことで、スポットの当たらなかったモノに
新しい価値を付与する手法を記してくれている。
“こうあるべき”とか“こうすべき”とか、深く関っている人間の思い込みのせいで
プロジェクトが暗礁に乗り上げることはたしかに多い。
誰もがみな、当初のコンセプトからはみ出すことを嫌がるし、
正攻法が最も効果的で正しいと決め付けている。
そんな思い込みをすべて取り除いて、もっとも据わりのいい位置へ
“ズラして”あげることが起死回生のきっかけなるという。
なるほど、著名なアートディレクター佐藤可士和氏が手がけている
「今治タオルプロジェクト」にも同じことがいえる。
肝はその“ズラし方”にある。
ある程度のセンスや経験を必要とするかもしれないが、
たくさんの例題と自身の生い立ちまで披露して、
伝えにくいコツのようなものを親切丁寧に伝えてくれていた。
もちろん、同書読んだぐらいで誰もが簡単にできることではない。
ただ、その仕組みのヒントぐらいはつかめるはず。