う、動いてないっ!!
動いてないのに、後ろから続々人はやってくる。
なんだ、これはっ!
こんな神聖な場所で、この人だかりはっ!
驚くなかれ、これが遷宮後まもなくの伊勢神宮(内宮)の様子である。
近所の秋祭りでも、ここまでにはならない。
いや、なったとしても動かないなんてことはない。
なぜ動かないのか。
はるか遠いところから伊勢神宮を目指してやってきたのだ。
御正宮の前で軽く手を合わして「はいさよなら」なんてとんでもない。
…とまぁ、たぶんそんなところ。
伊勢神宮の内宮に祀られているのは、
もちろん日の本の太陽神・天照大御神。
皇室の御祖神であり、私たちの総氏神様であらせられる。
今年はここ伊勢神宮が20年ごとに神殿を
お建て替えする「式年遷宮」の年にあたり、
去る2013年10月2日にとり行われたばかり。
その影響がこのちょっと異常な状態を招いているのは間違いない。
(もしかしたら江戸時代のブームもこんな感じか)
とりわけ今回は60年に一度行われる出雲大社の大遷宮(5月)と重なって、
マスコミにバンバン取り上げられたせいもあるだろう。
はては、数年前から続くスピリチュアルブームの影響も否めない。
それでも、それでもである。
まさかこんなことになるなんて、誰が想像しただろうか。
それにもましてさらに驚いたのは、一向に清浄さが失われていないこと。
こんなにも人が大勢いたら、よほど清められた神社の境内であっても、
人々の発するイライラでかなり乱れた気が充満するはずだが、
そんな膨大な負の感情を制してしまうのは流石という他ない。
結局、この動かない渋滞に加わる勇気が持てず、
その場で二礼二拍手一礼をして本殿を後にした。
道中、頭をかすめた親しい人たちのお守りでも…と思ったが、
社務所もまるで十日戎状態で、今回は御朱印だけいたたくことに。
境内を出る直前、池の縁にちょっとした人だかりができていた。
覗き見るとそれは見事な錦鯉たちが気持ちよさげに泳いでいる。
そんななか、ふとひときわ大きい金色の鯉が目の前をよぎる。
なんだか金運がアップしそうな気がして
悠然と泳ぐその姿をしばらくじっと見ていた。