『ぬけまいる』

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『ぬけまいる』

朝井まかて/著:講談社

読書家の友人が何人かいる。
みんなとても読むスピードが早い。
(というかボクが遅い)
ゆえにたくさん本を読む。

なので、ときどきオススメの本を教えてくれる。
今回ご紹介する本は、そんな経緯でもって手にしたもの。

まず気になったのは『ぬけまいる』というタイトル名。
当ブログ名に似た響きをもつその名は、実はお伊勢参りのことを指す。
お蔭参り(おかげまいり)ともいい、奉公人が主人に無断で、
はたまた子どもが親に無断で伊勢神宮へ参詣にいくことをそう呼んだそう。

江戸時代にそうした理由で集団参詣を行うブームが何度かあったようで、
当時は信心の旅ということで沿道の施しを受けることまでできたという。
江戸から伊勢神宮まではおよそ片道15日。
1泊2日なんていう現代の旅行に比べると、
それはもう庶民にとっては人生に一度あるかないかの
一大イベントの一つであったに違いない。

内容はそんな抜け詣りを断行してしまったアラサー女子3人のお話。
主人公のお以乃とその幼なじみのお志花とお蝶が、
思い思いの悩みを抱えながら家を飛び出し、
伊勢神宮へ至る道中でいろんな事件に巻き込まれる。
たくさんの人との出会いと別れ、初めて知る自分以外の人生、
幼なじみの知らなかった一面、自分の弱さ、本当の気持ち…。
ゴールの伊勢神宮ではたして3人はどうなっているのか、
読むほどに知りたくなってページをめくる手が早くなる。

そこで思い出すのが『東海道中膝栗毛』。
弥次郎兵衛(やじろべえ)と喜多八(きたはち)がお伊勢詣りに行く、
江戸後期にベストセラーになった十返舎一九の滑稽本。
同書はまるで、この歴史的傑作をモチーフに、
2時間サスペンスドラマの定番である
OL三人旅シリーズの醍醐味を取り込んだ痛快エンタメ時代劇。

おそらく、オススメされなければ読まなかったジャンルだろう。
いつも知らない世界を見せてくれる小説と友人に改めて感謝したい。

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