『祈りの幕が下りる時』

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東野圭吾/著:講談社

加賀恭一郎シリーズの最新刊。
テレビドラマ『新参者』で阿部寛演じる主人公といえばピンとくる人も少なくないだろう。
その原作『新参者』で練馬署から日本橋署へ異動してきた元警視庁捜査一課の加賀が
日本橋界隈を地道に歩きまわり、その街で営む様々な人と触れ合いながら、
街のすべてを知ろうとするひたむきな行動の真意がついに本作で明らかにされた。

物語の中心には、源泉を同じくする二本の大きな河が流れている。
一つは、事の発端となる殺人事件。
もう一つは、失踪した加賀の母に関わる謎。
その二本の河はときに枝分かれし、ときに合流しながら、真相という名の海へ流れていく。
その河に浮かぶ舟の船頭役には加賀の従兄弟で警視庁捜査一課の松宮があてがわれ、
一方の当事者でもある加賀本人は、あくまで物語のスピードを調整する櫓や櫂のような役回りだ。
そうすることで読者は松宮の目をとおして事件を客観的に俯瞰することができ、
『赤い指』(もっといえば『卒業』)から続く加賀の祈りの終幕を静かに見つめることができる。

同シリーズの直前の3作品(『赤い指』『新参者』『麒麟の翼』)を含む全4作に共通するテーマは
苦しいほどにせつなく、それでいて狂おしいほどに愛おしい我が子への愛。
守るものが存在する世界において、その幸せを祈り、その未来の安寧を手に入れるためなら、
人はとてつもなく強くなれ、とんでもない狂気をかかえることも厭うことはないのだと、
そんなメッセージがこの作品から伝わってくる。

いい年をして人の親はおろか、未だに守るべきものさえ持てない己でありながらも、
東野圭吾の描く様々な愛のあり方に触れるたびに目頭が熱くなる。
いつの日か再び、加賀恭一郎に会えることがあるとして、
守るべきものが存在する世界へ己の身を投じていたとしたら、
今とはもっと違った感じ方をするのだろうか。
できればそんな再会であることを祈りつつ、その日がくるまで楽しみに待つとしよう。

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2014年3月26日

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