『ペテロの葬列』

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宮部みゆき/著:集英社

ミステリーの女王・宮部みゆきが1年半に及ぶ新聞連載で綴った
主人公・杉村三郎シリーズの単行本化。

どうもピンとこないという人は、昨夏に放映されたTBSのテレビドラマ、
月曜ミステリーシアター『名もなき毒』といったほうが分かりやすいかもしれない。
主人公の杉村三郎には、宮部みゆきにイメージ通りと言わしめた小泉孝太郎を起用し、
同名小説と『誰か Somebody』の2作を原作に劇中設定を再構成。
上々の滑り出しでスタートし、驚異的なヒットにはつながらなかったものの、
好評のうちに終了した今どき珍しいドラマだった。

さて、前回は「毒」がテーマだったが、今回のテーマは「嘘」。
タイトルのペテロは、嘘をついた有名な寓話『三度の否認』を意図している。

「マルチ商法」「サイバー被害」といった社会問題を題材に、
そこに巣食う「悪」が伝染する仕組みをつまびらかに描いた珠玉の一冊。
序盤のバスジャック内で起こる異様な雰囲気を杉村三郎の目を介して見事に表現し、
後に起こる事件の伏線をさらりと蒔いてしまうあたりはまるでクリスティのごとし。

また、事件と交差するように語られる三組の夫婦の織りなす愛のカタチは、
三者三様でありながら、そのいずれも悲しくて虚しくて救われない。
衝撃のラストは予想外の展開で、あまりの結末にしばし放心状態になるほど。
良くも悪くも宮部みゆきというストーリーテラーに翻弄されっぱなしの690ページ。
シリーズをとおして登場する今多嘉親会長の真意や、園田瑛子編集長の過去も明らかになるので、
できればシリーズ1作目の『誰か Somebody』から読まれることをオススメしたい。

最後に一言だけ。
どうしても杉村菜穂子が好きになれなかったが、やっぱり今回も好きになれなかった。

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