『とっぴんぱらりの風太郎』

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万城目学/著:文藝春秋

万城目学/著:文藝春秋

万城目ファンタジー初の時代物…ってところに多少躊躇したが、
なによりその厚さに一番驚いた。
746ページはかなり重い。通勤時間で読むには少々扱いに困る。
挙句、最寄り駅へ降りるときに無理やりカバンに入れようとして、
あわてて栞の紐を指でひっかけてしまい、どういうわけか
ページを裂いてしまうなんてとんでもないことになったりして。
そんなことも面白かったら全て許せてしまうのだが…、さてさて。

栞の紐でページが…!!

栞の紐でページが…!!

主人公はニート忍者の風太郎。
彼の視点に立った一人称で始終物語は進んでいく。
序盤はほとんど風太郎の生い立ちや性格、人間関係、
現在置かれているプータローたる暮らし向きがメイン。
丁寧に描かれ過ぎているせいか、些かえっちらおっちら感が否めない。
また、主人公が持つ暗く切ない心の闇が物語全体を包み込んでいて、
いつもの万城目ワールドを楽しもうと思っていたら足元をすくわれるかも。
とりわけ戦闘や戦(いくさ)のシーンには、
これまでにないリアルで凄惨な描写も多く、
万城目学の新境地を垣間見た気がした。
とはいえ、稀代の幻術士・果心居士をうまく利用した
プロットの練り方は、これぞまさに万城目マジック。

後半から始まる怒涛の流れは、万城目流の盛り上がりを見せ、
ハラハラドキドキの手に汗握るシーンの連続。
過去の作品群と違ってユーモアに欠ける分シリアスで、
目頭が熱くなる見せ場もけっこう用意されている。
読み終えたあと、久々の超長編でしばらく放心するも、
「生きる」ということの難しさと大切さがじんわり心に広がった。

<余談>
物語の核となる“ひょうたん”とクライマックスの“大坂夏の陣”。
コアなファンを喜ばせるサービスも相変わらず忘れていない。

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