『獏の檻』

bakunoori2_1

道尾秀介/著:新潮社

さて、道尾秀介の登場である。
読み始めてすぐに思ったのが、とにもかくにもザ・道尾秀介。
行間に漂う粘着感、喪失感、焦燥感。
それでいて、どことなく本能的で官能的。

同書を読んだのは去年の春だった。
もし今だったら、はたして読みきれたか自信がない。
それほど読み手の心にプレッシャーをかけてくる。
ともかく、いつにも増して重く、そして暗い。

なんでそんなしんどそうなものを読むのか。
それはもちろん、オモシロイからである。
道尾秀介流ともいえる、予測不能な話の展開は読み手を飽きさせず、
そのまま最後のどんでん返しへと突き進んでいく。

8年ぶりの描きおろしとあって同書もその期待を裏切ることはない。
主人公が幼少の頃に住んでいた信州の寒村。
その村の有力者を殺害した容疑をかけられ、遺体で発見された父親。
時を経て、我が子と共に村を訪れた主人公に襲いかかる異様な出来事。

どことなく横溝作品のエッセンスが感じられ、薄気味の悪さが否応なく増し、
おのずとページをめくる手が早くなる。
ただ、何度か挟み込まれてくる“悪夢”のシーンは賛否がわかれるところ。
久しぶりに想像力をフル稼働させ、脳内プレビューにかなりなメモリを費やした。
その疲労感は半端なく、まさに「獏」が早くやってこないかと願うことしきり。

ボタンの掛け違い、誤った判断、思い込み。
ほんの些細なそれらのことがいつしか大事な人を傷つけたり、
目の前の幸せを逃してしまうことにつながる。
そんな負の連鎖を見せつけられ、絶望感に打ちのめされそうになるが、
ラストに訪れたワンシーンに救われ、ほっとひと安心。
ちゃんと一筋の光を用意してくれるあたりは、さすが道尾秀介。
この落差に、いつもはまってしまう。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村


本・書籍 ブログランキングへ

carolさんの読書メーター

2015年6月3日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です